◆アカウントプランは「共有財産」を作る
アカウントプランは、「共有財産」を作るとは、どういうことでしょうか?
従来の営業手法と比べた「アカウントプラン・アカウントプラン営業」の特徴は何でしょうか?
それはいくつもありますが、最大の特徴は「アカウントプランは、ドキュメントである=文書化されている=電子化されている」ということです。
一般論として、従来の営業手法が「個人的なやり方・個人的なノウハウの塊」だとすれば、
それは「その個人のもの・その個人の強み・他人には教えたくないもの」であるため、その本人以外の営業パーソンが共有できる形に「ドキュメント化」されることはありません。
ここで言う「従来の営業手法」とは、「一人から数名の優秀な個人が、課・部の売上・利益の過半から大部分を上げる」「新人・若手に対する実務の教育は、OJTが主体=背中を見て覚えろ」「優秀な営業パーソンは、特定の懇意なお客様との関係を自己の強みとして、会社に存在感をアピールする」「優秀な営業パーソンは、自分の営業ノウハウを他人に教えない」などの特徴を指しています。
では、アカウントプラン営業はどうかと言えば、アカウントプランは、作成時点で「ドキュメント化=文書化=電子化」されているので、アカウントプラン営業では「アカウントプランの共有=情報の共有=ノウハウの共有」が可能です。
さらに「営業シナリオ=営業活動の可視化(5W1Hと固有名詞)」によって、 「いつ・どこで・誰が・誰に対して・なぜ・何を・どのように」営業活動を行っているのかを、お客様を担当する個々の営業パーソン以外の第三者が、理解できます。
つまり、従来の営業手法の場合には、優秀な営業パーソン個人に帰属していて、お客様を担当する本人以外の第三者が知る・理解することができなかった、営業活動・営業手法について、アカウントプランを構成する「①お客様情報と ②営業シナリオ」によって、本人以外の第三者も営業活動の5W1Hを理解し、その優れた営業活動・営業手法についての情報を共有することができます。
また、必ずしも優秀とは言えない営業パーソンの営業活動・営業手法であっても、営業部門・会社全体の「共有財産」として、貴重な情報・ノウハウになります。
当時、私が所属していた外資系大手ITベンダーの場合には、毎月のアカウントプランセッション(アカウントプラン、特に営業シナリオに着目した、レビュー・討議)で使われた各担当者のアカウントプラン資料を、営業部としてまとめて保管していました。当初は「紙」を10センチバインダー数十冊に保管していましたが、その後は「電子ファイルで部門サーバーに保管」となりました。
また、これらの資料は、自社の役員・経営トップを、自分が営業として担当する企業の役員層・経営トップへの訪問に連れて行く際に、ブリーフィング資料の一部として添付することにも使われていました。
こうした「アカウントプランとして記録された情報」は、いわゆる「ベストプラクティス」の蓄積としてばかりではなく、競合他社との競争に敗れた「敗戦」に関して、自社の営業シナリオを元に、競合他社の営業活動を推測・分析し、次の競合案件の際に負けないための、戦略・戦術を練るうえで、貴重な資料になりました。
また、営業担当者・営業管理職が異動・交代した際の「引継ぎ資料」の役割もはたしていました。
こうした情報の蓄積のためには、アカウントプランを作る=「ドキュメント化=文書化=電子化」という作業が不可欠で、こうした地道な作業を数年・数十年と積み重ねた企業とそうではない企業では、営業活動の成果に大きな差が出てきます。特に、それは、ここ一番の大勝負で勝敗を分けることにもつながります。
こうした、「アカウントプランを作る・アカウントプランを活用すること」が、貴重な「会社としての共有財産を作る」こと、さらに「会社としての営業力を強化する」ことにつながります。
★「アカウントプラン・アカウントプラン営業」は、貴重な情報・体験を個人だけのモノとせず、「会社としての共有財産」としていくために必要です。それが「個人ばかりではなく、会社としての営業力を強くする」ことにつながります。
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