◆アカウントプランは営業活動を「可視化」する
アカウントプランは営業活動を「可視化」するとは、どういうことでしょうか?
ここで言う「可視化」は、個々の営業パーソンが日々行う営業活動について、その「背景にある考え方=戦略・戦術」を「5W1H(固有名詞と数字)」で、当事者以外の第三者が理解できる「ドキュメントとして表現する・情報を共有する」ということです。
「アカウントプラン」・「アカウントプラン営業」が前提とするのは、「営業シナリオ」と「情報の共有」です。「営業シナリオ」は、「競合他社分析」を基にして作成された、競合他社に打ち勝って「自社が選ばれるためのストーリー」です。
また、「営業シナリオ」は、「アクションプラン」と表裏一体のもので、「どちらか片方だけしか存在しない」ということであれば、「営業シナリオだけを考えて、アクションをしない」または「営業シナリオも考えずに、無計画にアクションをする」という極端なケースで、どちらもビジネス案件が大規模になればなるほど、受注することはできない、と言えます。
「アカウントプラン」・「アカウントプラン営業」で、最重要なものは何かを端的に言えば、「営業シナリオ+アクションプラン」です。先ほどのように、アクションプランと営業シナリオが表裏一体とすれば、「営業シナリオ」こそが、「アカウントプラン」・「アカウントプラン営業」の核心です。
ですから、この単なるドキュメントである「営業シナリオ」を、現実の世界で「実現する」ために、「営業シナリオ」を関係者間で共有して、関係者間の協力を引き出すことが必要になります。
これを、より具体的に説明すると、「関係者」以下のようになります。
①営業パーソン ②営業パーソンの上司 ➂上司の更に上司=本部長・役員・社長などの 「営業部門の縦のライン」
④同僚のSE・SE部門の管理職・役員 ➄PM(Project Mnager)・PM部門の管理職・役員などの 「営業部門の横のライン」
⑥ビジネス案件によっては、製品開発部門の関係者・CE(Customer Enjineer=保守)部門の関係者・財務部門の関係者・人事部門の関係者などの 「営業部門の斜めのライン」
なぜ、⑥の財務部門・人事部門など、営業シナリオとは関係が無いと思われる部門・組織が関係者なのでしょうか?
それは、私が実際に行った営業活動に際して、これらの関係者を営業活動の「リソース」として位置づけて営業シナリオを作成し、下記のことを実行した経験があるからです。
以下の事例では、自社がそのお客様に対して、システム構築実績の無い分野(いわゆる「White Space/ New Business 」という分野)を担当する営業活動が、当時の私の役割であり、直接的な「売り込み」は不適当な段階でした。お客様のキーパーソンと、私の所属する会社との間に、まず信頼関係を築く必要があったからです。
当時の私は、下記のことを通じてお客様が入手する情報が、「お客様にとって、価値のある情報」であるという仮説を立て、これらを提供することによって、「お客様の信頼を得る・自社の価値を印象付ける・自分自身の価値を高める」ことを意図して、営業シナリオを作成していました。
ⓐ財務関係のシステム提案に際して、自社の財務部門役員から、
自社のもつ財務上の課題に対する取り組み状況を、お客様にレクチャーする場を作った。
ⓑ人事関係のシステム提案に際して、自社の人事部門管理職から、
自社の人事システム更改に際しての新しい施策について、お客様とディスカッションする場を作った。
ⓒネットワーク設備関連のシステム提案に際して、
CE部門の管理職が、現場のCEが使うCE支援システム(お客様に導入したハードウェア・ソフトウ
ェアに関する構成や保守・バージョンアップ等のあらゆる履歴を蓄積/お客様のネットワーク設備管理
システムと類似機能をもっていた)のデモンストレーションを行う場を作った。
このようなことを実行するためには、「営業活動を可視化する=5W1Hと固有名詞に裏付けられた、具体性・実現性のある営業シナリオ・アクションプラン示す」ことが無ければ、関係者の協力を得ることはできません。また、これらのことは、お客様が参考事例として「何とかして知りたい情報」であり、既にこれらのシステム開発を担ってきた競合他社に比べて、自社には「競合他社よりも優れた部分・お客様の役に立つ情報」がある、との確信が私にはありました。そのため、これらの、直接的な営業活動ではないことを、営業シナリオの一部に組み込んだということです。
実際の「アカウントプラン・アカウントプラン営業」は、机上のドキュメントに過ぎない「営業シナリオ・アクションプラン」を元に、現実の世界で、上記のようなことを実現していくことであり、そのためには関係者が納得して協力できるように、「営業活動を可視化する」ことが不可欠です。
その結果として現れるのが、従来の(或いは一般的な)「組織をまたがった情報共有をしない営業活動」、或いは営業シナリオ上で使えるリソースとして「関係者の範囲を狭くとらえる営業活動」と、「アカウントプラン・アカウントプラン営業」とのちがいです。
「アカウントプラン・アカウントプラン営業」が実践するのは、「自分が所属する会社」或いは会社の枠を超えて「パートナー企業」を含めた、「チームセールス・組織営業」によって競合他社との競争に打ち勝つ営業活動です。
そのためには、ドキュメント化され、第三者が理解できる「営業シナリオ」が必要で、「可視化された営業活動=営業シナリオ」によって、関係者の協力を得るアクションが必要になります。
★「アカウントプラン」は、ドキュメント化され、第三者が理解できる「営業シナリオ」によって、「可視化された営業活動」を実践するツールです。 同時に、関係者の協力を得て「チームセールス・組織営業」を実現するツールです。
このことが競合他社との競争に打ち勝つための優位性を、自社にもたらし、会社としての「営業力を強くする」ことにつながります。
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