◆アカウントプランは営業活動を「シミュレーション」する
アカウントプランは「営業活動をシミュレーションする」とは、どういうことでしょうか?
ここで言う「シミュレーション」は、アカウントプランの中核である「営業シナリオとアクションプラン」について、主に以下のような視点で、「プラン」の段階で事前に営業活動を「検証」し、不備があれば、実際にアクションを起こす前に、「修正・更新→改善」しようとするものです。
これについては、別のパートで詳細を説明しますが、「アカウントプランセッション」と呼ばれることが多い「ディスカッション」と「その場で結論を出す/決定すること」を目的とした会議の場を通じて行います。
①その営業シナリオで、競合他社との競争に、打ち勝つことができるか?
②その営業シナリオに、実現可能性はあるか? もし、実現可能性が低ければ、どうすれば実現可能性を高めることが
できるか?
➂その営業シナリオの実行に際して、自社にとって営業的・技術的なリスクは生じないか?
「アカウントプラン・アカウントプラン営業」の中核は、「営業シナリオとアクションプラン」です。
「営業シナリオ」は、「競合他社分析」を基にして作成された、競合他社に打ち勝って「自社が選ばれる
ためのストーリー」です。「アクションプラン」は、営業シナリオを「5W1H(数字と固有名詞)」で
具体的に表したものです。
ですから、通常はこれらについて、「プラン」の段階で事前に営業活動を「検証」し、不備があれば、実際にアクションを起こす前に、「修正・更新→改善」することができます。
もし、「営業シナリオとアクションプラン」があっても、事前に「シミュレーションできない/修正・更新ができない」場合には、これらのことをするための「情報が不備」だと言えます。
この「営業シナリオとアクションプラン」に関する「シミュレーション=検証・修正・更新」の視点に関して、より具体的に説明すると、以下のようになります。
①その営業シナリオで、競合他社との競争に、打ち勝つことができるか?
→「営業シナリオ」は、「競合他社分析」を基にして作成された、競合他社に打ち勝って「自社が選ばれる
ためのストーリー」ですから、「アカウントプランセッション」に参加したメンバーが、営業シナリオを
作成した営業担当者の説明を聴いて、「これなら競合他社に勝てる」「お客様に受け入れられる」と「納
得できるかどうか」です。
②その営業シナリオに、実現可能性はあるか? もし、実現可能性が低ければ、どうすれば実現可能性を高
めることができるか?
→ここでいう「実現可能性」とは、その営業シナリオを、机上の空論・理想論ではなく、「実際に実現でき
るかどうか」です。
どれほど優れた営業シナリオであっても、実際の自社の状況(技術的な裏付け・実績の有無・対応する人
員の確保・費用など)から判断して、「実現できるという確信をもてるかどうか」です。
営業シナリオを作成した担当者が「実現できる」と考えていても、「アカウントプランセッション」に参
加したメンバーが、「実現できるという確信」がもてないのであれば、通常は、その営業シナリオ自体に
不備がある、ということです。
そこで、アカウントプランセッションでのディスカッションは、「どうすれば実現可能性を高めることが
できるか?」「営業シナリオの 修正・更新→改善」という討議になります。
➂その営業シナリオの実行に際して、自社にとって営業的・技術的なリスクは生じないか?
→ここでいう「リスク」とは、「技術的な裏付け・実績の有無・対応する人員の確保・費用など」の視点か
ら、「営業シナリオ」を実行した場合に、「自社・お客様に、問題が生じないかどうか」です。
例えば、お客様が希望する情報システムの概要を理解した結果、自社がそのシステムの開発請負を提案し
ようとした場合に、
ⓐそもそも自社に「実現できる技術」があるのか? ⓑ実現できる技術はあるが、「その技術を使っ
た、開発実績」があるのか? ⓒ開発実績はあるが、お客様が必要とするタイミングで、「プロジェ
クト要員の確保」ができるのか? ⓓプロジェクト全体を見渡した場合に、「お客様の想定する費用」で
請け負うことができるのか? などです。
これらの観点を無視してシステム開発の提案などを行った場合に、お客様との契約前或いは契約後に、
これらの問題が顕在化して、お客様との間に深刻なトラブルが生じることが、IT営業に関しては、決し
て珍しくありません。
実際に、私が6年間にわたりコンサルティング業務を行っていた国内最大規模のITベンダーの場合、当時毎年約2兆円の売上になる、システム開発ビジネスを行っていましたが、毎年約500億円の赤字が生じていました。これは、われわれがこのお客様から、「アカウントプラン・アカウントプラン営業」の導入・定着に関するコンサルティング業務の依頼を受注したばかりで、このお客様がこれから本格的に「アカウントプラン・アカウントプラン営業」に取り組むタイミングでした。
この企業が、このような自体に陥っていた理由の一つは、ここで説明しているような「アカウントプラン・アカウントプラン営業」自体が無く、当然「営業シナリオとアクションプラン」に関するシミュレーションも無かったことでした。
ですから、「➂その営業シナリオの実行に際して、自社にとって営業的・技術的なリスクは生じないか?」という検証も、修正・更新も、ありませんでした。
そのため、営業活動の段階で、お客様の希望するシステム開発の提案に際して、➂のような「営業的・技術的なリスク」の検証もないままに、提案・契約・開発へと進み、ある時点でこれらの内在していたリスクが顕在化してしまい、巨額の赤字を生じても、システム開発を完遂せざるを得なくなっていました。
このような場合、そのプロジェクト自体が、ヒト・モノ・カネに関して自社に危機をもたらすと同時に、そのプロジェクトのトラブルが一段落するまでは、そのお客様に関して新たなビジネス案件の営業活動の余地がなくなります。トラブルの最中に売り込むベンダーなど、お客様の怒りと不信感を増幅させるばかりで、お客様は見たくも無いからです。
こうしたことは、結果的にそのITベンダーの営業力を弱めることにつながります。
アカウントプランは「営業活動をシミュレーション」し、「営業シナリオとアクションプラン」について、「プラン」の段階で事前に営業活動を「検証」し、不備があれば、実際にアクションを起こす前に、「修正・更新→改善」しようとするものです。
それによって、以下のようなことが実現され、「アカウントプラン・アカウントプラン営業」の能力が向上し、結果として「営業担当者個人としての営業力・企業としての営業力」が強くなります。
①その営業シナリオで、競合他社との競争に、打ち勝つことができるか?
→「営業シナリオとアクションプラン」を「修正・更新→改善」できる
②その営業シナリオに、実現可能性はあるか? もし、実現可能性が低ければ、どうすれば実現可能性を高めることができるか?
→「営業シナリオとアクションプラン」を、より実現性の高いものに変えることができる
➂その営業シナリオの実行に際して、自社にとって営業的・技術的なリスクは生じないか?
→「営業シナリオとアクションプラン」に、「内在するリスクを低減する・除去する、或いは、リスクがが
顕在化することを防ぐ」ことができる
★「アカウントプラン」は、「営業シナリオとアクションプラン」を、実行する前に「シミュレーション」することで、競合他社との競争に打ち勝つための優位性を自社にもたらし、自社とお客様にとってのリスクを低減し、会社としての「営業力を強くする」ことにつながります。
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