★「アカウントプランセッション」と「組織営業」
「アカウントプランの導入・活用・定着」について、国内大手ITベンダーを、のべ6年間支援した経験を基に、アカウントプランの導入・活用の「肝」について書きます。

「アカウントプランセッション」で「組織営業」の仕組みを作る

◆「アカウントプランセッション」で「組織営業」の仕組みを作るとは?
「アカウントプランセッション」・「組織営業」の仕組みとは、どういうことでしょうか?
「アカウントプランセッション」とは、アカウントプランの一部である「営業シナリオ・アクションプラン」について、「ディスカッション」と「その場で結論を出す/決定すること」を目的とした会議のことです。
以下、前のパートの繰り返しになりますが、下記の視点からディスカッションを行い、その時点で得られている情報を元に、結論を出し、決定をします。
結論・決定の対象になるのは、主に以下のことです。
・「営業シナリオ」
・「アクションプラン」
・営業シナリオとアクションプランの実行に際しての、
「懸案事項」・「懸案を解決する方策」・「方策を実行するためのリソース」・「関係者の役割分担と実行期限」など。
<ディスカッションの視点>
①その営業シナリオで、競合他社との競争に、打ち勝つことができるか?
②その営業シナリオに、実現可能性はあるか? もし、実現可能性が低ければ、どうすれば実現可能性を高めることが
 できるか?
➂その営業シナリオの実行に際して、自社にとって営業的・技術的なリスクは生じないか?
ペンディングにする事項がある場合には、その事項に関して「いつまでペンディングにするか=いつ結論を出すのか」という、「結論を出す・決定する、期限」を必ず決めます。

 

「組織営業」とは、「一匹狼的な営業パーソン・ヒーロー的な営業パーソン」に頼るのではなく、「企業としてのリソース」をフル活用して、「企業としての営業活動」を行う行動様式です。
「組織営業」の必要性・有効性に関しては、当サイトの「アカウントプランと法人営業」などに詳しく書いていますので、ぜひお読みください。

 

詳細は、別のパートで解説しますので、初めに全体のイメージ(IT関連営業の場合)をお伝えします。
まず、セッションの参画メンバーです。
①あるお客様・ある案件を担当する、当事者である営業パーソン(例:担当者・チームリーダー など)
②その上司(例:営業課長職に相当する役職者)と 上長(例:営業部長職に相当する役職者)
➂そのお客様・案件を担当する、SE・SE系管理職(課長職・部長職) が必須メンバーです。
 更に、状況に応じて以下のメンバーが参画します。
④保守業務の担当者(ハードウェア 及び ソフトウェア)と 保守業務系管理職(課長職・部長職)
➄関連する社内他部門(例:製品開発部門・マーケテイング部門・事務管理部門)などです。

 

次に、具体的なディスカッション・指示・決定などの、やりとりのイメージです。
★ビジネス案件を発見して、これから具体的な営業活動を進めようとする局面。
毎週月曜の課内ミーティング、
2年目程度の営業担当者を想定。
少し厳しいやり取りですが、分かり易くお伝えするためには良いかと思います・・・・。

 

「青字」の部分が、「アカウントプラン・アカウントプランセッション」によって実現される、
「営業シナリオ・アクションプラン」の修正・助言にあたる部分です。

「懸案事項」・「懸案を解決する方策」・「方策を実行するためのリソース」・「関係者の役割分担と実行期限」などに関して、具体的に=5W1H=数字と固有名詞を使った表現 で、簡潔に修正・助言を行います。 
これらのやりとりを通じて、「営業シナリオ・アクションプランの、修正・助言」と「部下育成」を同時に行います。
「実戦的なアカウントプランセッション」では、「四半期」「月次」「週次」「毎日」など、ビジネス案件の局面・緊急性・重要度によって、参画メンバーや内容を変えて行います。
常にタイムリーにビジネス案件の状況・営業活動の進捗状況を把握し、手遅れにならないように、営業シナリオ・アクションプランを修正していくことが必須で、これによって競合他社との競争に打ち勝って、ビジネス案件を獲得することが最大の目的です。

 

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A 営業担当
それでは、先週の活動結果と今週のプランを説明します。
先週の活動テーマは、以下の3つでした。
1番目は、プラットフォーム・サービス部のSEグループに対するネットワーク案件のサーベイ
2番目は、情報システム部に対する、競合他社A社・B社の評価に関するサーベイ
3番目は、それらをもとにした ビジネス案件を発見するための、ビジネス・パートナーの活用策を立案すること、  でした。
まず、1番目に関しては、まだできていません。2番目は、半分くらい終わりました。3番目は、ぜんぜん進みませんでした。
B 営業課長
もう少し、具体的な報告がほしいな。
1番目2番目の、対象者の役職と人数は? そのうち何人くらいできたの? できなかった理由はどんなこと?
2番は、マーケテイング部門から、競合他社の情報収集のための、「サーベイシート」とか、作ってもらったのか?
3番目は、主に組もうとしているパートナーはどこか? そこを選んだ理由は?
A 営業担当
・1番目の対象者は、10人でお客様の組織図に載っていたひとです。みな担当か係長クラスです。
 5人は、面談できましたが、あとの5人は、面識がないので、訊けませんでした。
・2番目の方は、仲のいいお客様数名です。
 A社・B社に関する評価は、マーケテイング部門のXXさんに、サーベイシートの作成を依頼しましたが、
 XXさんに他の仕事が入って、半分しかできませんでした。
・パートナーは、つきあいのある○○販売にしようとしています。理由は、面識があるからです。
B 営業課長
Aくん、指示するから、To-Do をメモしておけよ。
・1番目のサーベイは、その上の鈴木課長と佐藤部長にも訊かないとだめだよ。
 佐藤部長・鈴木課長とも、うちのYY SE部長が仲がいいから、YYさんにもいっしょに行ってもらいなさい。
・2番目の、マーケテイング部門のXXさんが動いてくれない件は、上司のZZ課長に話を通しておかないから、
 XXさんにプライオリティを下げられちゃうんだよ。
 Fリーダー、君がAくんといっしょに、ZZ課長のところに行って、アカウントプランを見せて、重要だってことを
 今日中に説明してきなさい。
・それから、お客様から話を聞く対象には、情報システム部の加藤部長もいれること。 
 おれも行くし、マーケテイング部門のZZ課長も連れて行きなさい
 そうやって、ZZ課長も巻き込んでおけば、ZZさんも、このあとAくんのことをサポートせざるを得なくなるだろ。
 早めにZZさんをInvolveしておきなさい。それから、ZZさんと打合せしたことをメモにして、YY SE部長とおれ
 にも、メールで回してね。
・パートナー選定は、Aくん一人で判断しないで、マーケテイング部門に推薦してもらいなさい
 それと、その分野は、A社・B社の製品も扱っている□〇商会が詳しいから、おれが□〇商会のJJ部長に、
 メール出しといてやるよ。 
 出すときに、Aくん・FリーダーにもCC入れるから、もしおれが忘れてたら、催促してくれよ。
・あと、こういうビジネス案件を発見した場面は、Fリーダーが得意だから、Fリーダーにサポートしてもらえ
 できれば、Fくんが作った昔のパートナー活用シナリオを見せてもらって、真似して作れ
 シナリオは、Fさんーにレビューしてもらうこと。
・で、今言ったことは、いつまでに終わりそう? 
 3日くらい、水曜の17時ごろまでにはできるか? わかんなかったら、ホールドしないで、すぐ誰かにサポートして
 もらうように。
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「アカウントプラン」・「アカウントプランセッション」は、形式を整えることが目的ではなく、「ビジネス案件の受注/ 受注後のプロジェクトの円滑・確実な遂行/ お客様との良好なリレーションシップの確立と強化などを目的とする」ものです。
ですから、常にタイムリーにビジネス案件の状況・営業活動の進捗状況を把握し、手遅れにならないように、営業シナリオ・アクションプランを修正していくことが必須で、その内容はビジネス案件の状況によって、様々に変わります。
そのため、アクションプランの活用に熟達していた大手外資系ITベンダーの場合には、アカウントプランセッションは、受注ばかりではなく、「受注後の様々なトラブル(技術的なトラブル・納期や品質に関するトラブル・人的リソースに関するトラブルなど)の防止・解決」に関するディスカッションの場として活用することも、日常的に行われていました。

 

また、月次・週次・時には日次(毎日)のインターバルで、参画メンバーを変えて行われるアカウントプランセッションにおいて使われる資料も、一度作成した資料を、「できる限り使いまわす」ことで、作成の時間と手間を省くため、作成時点でそのような活用に耐える資料にすることも意識されていました。
ですから、ビジネス案件の状況により、案件に着手する当初から「アメリカ本社を Involveする/サポートを得る」ことを前提に、日本語の資料は作らずに、英語の資料に一本化してアカウントプラン資料を作成する場合もありました。

 

 

★「アカウントプラン」は、「アカウントプランセッション」・「組織営業」を実行し、競合他社との競争に打ち勝つための優位性を自社にもたらします。

 

 

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